撹拌下における液々分散系の転相現象


[目次] [1.はじめに] [2.既往の研究] [3.実験方法] [4.結果と考察] [5.おわりに] [6.引用文献] [図表]
[4.1 ケロシン−水系] [4.2 シクロヘキサン、四塩化炭素−水系] [4.3 n-ヘキサン、イソブチルアルコール−水系]

4.2 シクロヘキサン、四塩化炭素−水系

 ケロシンとよく似た液物性(表1)を持つシクロヘキサンの転相点を図5に示す。 どちらの転相もケロシンの場合より起こりやすくなり、転相遷移域が狭くなった。 また、O/WからW/Oへの転相では撹拌速度が高い領域で転相時の分散相分率が小さくなっている。

 流動パラフィンを加えた系では、どちらの転相も起こりにくくなった。 この結果はケロシン系と大きく異なっている。 O/WからW/Oへの転相では流動パラフィンの添加によって撹拌速度依存性が見られなくなった。

 水よりも大きな密度を持つ四塩化炭素(表1)を有機相として用いた結果を図6に示す。 W/OからO/Wへの転相点はケロシンとシクロヘキサンの場合の間に位置するが、逆向きではどちらの有機液よりも転相しやすくなった。 油相の密度が転相に与える影響はそれほど大きくないことが示唆された。

 流動パラフィンの添加は、シクロヘキサンの場合と同様にどちらの転相を抑制する働きを示した。 また、その変化の程度はシクロヘキサンのときよりも大きかった。

 図7は、流動パラフィンを含む油相の粘度が転相点に与える影響を示す。 O/WからW/Oへの転相点は3種類の有機液について明確な差は見られないが、W/OからO/Wへの転相は溶媒による差違が顕著である。 前述したように、粘度の増加によってケロシン系の転相は起こりにくくなるが、他の有機液系では起こりやすくなることが分かる。 しかし、流動パラフィンの濃度が高くなると考えれば粘度の増加とともに転相点は収束すると予想されるのに、実際にはケロシンとシクロヘキサンの転相点は近づいているが、四塩化炭素系は大きくずれている。 このような転相挙動を粘度の効果だけで説明することはできない。


[目次] [1.はじめに] [2.既往の研究] [3.実験方法] [4.結果と考察] [5.おわりに] [6.引用文献] [図表]
[4.1 ケロシン−水系] [4.2 シクロヘキサン、四塩化炭素−水系] [4.3 n-ヘキサン、イソブチルアルコール−水系]