図3は、ケロシン−水系におけるW/O分散からO/W分散およびO/W分散からW/O分散への転相時の有機相容積分率を撹拌速度に対して示している。
縦軸は、有機相容積分率であるのでW/OからO/Wへの転相(白抜のキー)に対しては転相時の連続相分率、O/WからW/Oへの転相(黒塗のキー)に対しては分散相分率を表わしていることになる。
広範囲の撹拌速度でできるだけ均一な分散を得るために、全容積を2.00、3.00、3.87Lの3種類にして実験を行った。
図から分かるように、全容積が変わっても転相点はほとんど同じであった。
また、図1で示したように3つの領域、水相連続領域、油相連続領域、および転相遷移域に分けられることも示す。
すなわち、水相あるいは油相連続領域ではそれぞれの液相のみが連続相として存在できるけれども、転相遷移域では分散を形成させる方法によってW/O、O/Wいずれの分散形態をも取りうる。
W/OからO/Wへの転相点は、撹拌速度の増加とともに減少し、やがて一定値となっている。
Arashmid & Jeffreys[1]やNishikawa[8]らは、分散滴の平均径は撹拌速度とともに減少し、分散相分率とともに増加することを報告した。
分散滴の分裂・合一の過程で合一が優勢になったときに転相が起こり、滴径の小さいほど合一が起こりにくいと考えれば、撹拌速度が大きくなると滴径が小さくなる結果として転相しにくくなることが説明できる。
Vermeulenら[13]の提案した液々分散系としての粘度、分散粘度は分散相容積分率が大きくなると高くなる。
したがって、撹拌速度が大きくなり転相点における分散相分率が高くなると分散粘度は大きくなり、撹拌の効果が槽全体に及びにくくなって乱れによる滴の分裂が抑制されると考えられる。
分散相分率の高いときに液乱れが小さくなることは肉眼でも容易に観察された。
すなわち、ある分散粘度以上では撹拌による流動状態への影響が小さくなり、撹拌速度の大きな領域で転相点がほぼ一定になる原因となる。
図3より、O/WからW/Oへの転相は撹拌速度によらず一定であり、また逆向きの転相よりも高い分散相分率で転相することがわかる。
このような高い分散相分率では分散粘度が大きいため、転相に及ぼす撹拌の影響が無視されたのかもしれない。
なお、いずれの系においても転相直前は比較的乱れが少ないが、転相後槽内は激しい乱れを示した。
これは、転相に伴う分散粘度の急激な変化によるものと推測される。
図4は、油相の粘度(表1)を変える目的でケロシンに流動パラフィンを加えた系の転相挙動を示す。
W/OからO/Wへの転相では、流動パラフィンの添加によって転相しやすくなり、その添加量によって違いは見られなかった。
逆方向の転相点は流動パラフィンの添加によっても影響を受けなかった。
油相粘度の変化による転相点の変化については次節でさらに検討する。
[目次]
[1.はじめに]
[2.既往の研究]
[3.実験方法]
[4.結果と考察]
[5.おわりに]
[6.引用文献]
[図表]
[4.1 ケロシン−水系]
[4.2 シクロヘキサン、四塩化炭素−水系]
[4.3 n-ヘキサン、イソブチルアルコール−水系]