本研究では、撹拌下における液々分散系の転相現象について、いくつかの有機溶液−水系において検討した。
W/OからO/Wへの転相は撹拌速度の増加とともに起こりにくくなった。
これは、撹拌速度の増加に伴って分散滴径が減少し、滴の合一が抑制されるためと考えられる。
また、ある程度以上の撹拌速度では転相点は変わらなくなった。
大きな撹拌速度で転相時の分散相分率が高くなると、分散粘度が増加して撹拌による液乱れの変化が小さくなるためと思われる。
いずれの系でもO/WからW/Oへの転相点は逆向きの転相点よりも高かった。
また、ケロシン系および流動パラフィンを添加した有機液系では転相点は撹拌速度に依存しなかったが、他の系では撹拌速度が大きいと転相しやすくなった。
しかし、液物性(密度、粘度、界面張力)の影響に関しては、それぞれ個別の性質から転相挙動との関連を見出すことは困難であった。
また、滴径と関連が深いと思われるWeber数による相関性も見られなかった。
従来から、撹拌下における液々分散については多くの研究がなされているが、転相現象に関する報告は少なく系統的な基礎データの蓄積が不足している。
物性の影響を調べた研究はあるものの、そこで得られた傾向は必ずしも一般的に適用できない場合が多い。
一方、理論的な検討は、転相が起こるような高い分散相分率における滴合一・分裂のメカニズムに関して不明な点が多いため、解析が困難であるのが現状である。
この機会に多くの方が転相現象に興味を持たれ、さまざまな角度から現象の解明にアプローチされるようになることを期待する。
[目次]
[1.はじめに]
[2.既往の研究]
[3.実験方法]
[4.結果と考察]
[5.おわりに]
[6.引用文献]
[図表]