液−液系の撹拌操作は、二液相間の接触界面積の増大や滴内外の境膜移動抵抗の低減などを目的として、溶媒抽出、直接接触式熱交換、異相系反応などの工業的操作において利用される。
液々分散系の操作において二液のどちらが分散相となり連続相となるかは、滴の大きさやその分布に影響するだけでなく、分相時間やレオロジー特性にも大きな意味を持つので、分散の型を予測することは重要である。
水溶液と有機溶液とを撹拌したとき水相が分散相、油相が連続相となった系を油中水滴(W/O)型分散、逆を水中油滴(O/W)型分散と呼ぶ。
この分散の型を決める要因として二液相の容積比や分散開始方法が挙げられる。
一般的に容積比の小さな液が分散相となりやすく、分散開始時に撹拌翼の置かれている相が連続相となりやすい。
しかし、液の物性や撹拌装置の種類・材質にも影響されることが知られている。
撹拌下の液々分散においてで操作条件が変わると突然分散相と連続相が逆転することがある。
この現象は転相(phase inversion)と呼ばれ、液々分散操作においてしばしば問題となる。
溶媒抽出操作は転相直前の操作条件が最も効率よいと言われているが、転相が起こると滴径を初めとして分散状態に大きな変化が生じるため、工業的には好ましくない。
したがって、転相点の予測は、任意の撹拌分散系における分散の型の決定に役立つのに加えて、溶媒抽出や直接接触式熱交換の移動速度や効率を論ずる上で、さらには装置を実際的に操作する上で非常に重要である。
ここでは、撹拌下における液々分散系の転相現象について我々の研究を中心に概説する。
[目次]
[1.はじめに]
[2.既往の研究]
[3.実験方法]
[4.結果と考察]
[5.おわりに]
[6.引用文献]
[図表]