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シャボン玉日記 6


9月11日
 今年の科学体験学習講座第2弾は体験入学である。 私自身は当日出張のために参加できず、学生にまかせることになる。 前回のESSSは女子学生4名にやってもらったが、今回は夏休み前からずっと準備をしてくれた男子学生3名である。
 ESSSのときの反省点として、必ずしもシャボン玉液の組成が満足できるものではなく、当日の気候などによって出来不出来にばらつきがあること、そして照明が弱くて写真を撮ったときにシャボン玉膜が見えにくいことがあった。
 後者の問題は写真のバックとなる暗幕の位置や写真を撮る場所を変えることで多少はましになりそうだ。 ただ、断然見やすくなるというわけではない。 今回はあまり時間も取れなかったのでこの程度で我慢する。 一方、組成の問題は以前インターネットで調べた結果に基づいて試してみることにした。

 体験入学を翌日に控えた放課後、3人が集まって来た。 試す組成はインターネットで探して一番多かった組成、日記4(8/10)に書いた洗剤:洗濯糊:水=1:5:6〜10である。 始めに水の割合を最も少なくしてやってみたが、どうも粘っこくてうまくいかない。 そこで、少しずつ水を足していってみた。 しかし、違いがあまりよくわからない。 どの組成がよかったのか、結論を下せないまま練習は終了。

 忙しくて時間がなかったとはいえ、不本意なものになってしまった。 落ち着いて調製できる時間をきちんととるべきだったと反省。

9月12日
 体験入学が開かれた。 今回は、午前(26名)と午後(29名)に2回に分けて行われる。 対象は全員中学3年生。 多くは受験志望でもある。 これと平行して学校見学会も行われており、中には午前中見学会、午後体験入学という生徒もいるようだ。
 それはともかく、前回半日だったのに比べて1日仕事なのが大変である。 とはいえ、私は出張でいないため、学生にまかせきりなのだが。 そんなわけで、当日の様子は後で聞いた話である。

 液組成は、前日試したものでチャレンジしたという。 なかなか冒険する連中だ。 少し気温が高かったせいもあって、比較的うまくいったようだ。 ただし、長持ちせず、次々新しい液を足してやらないとのびが悪くなるらしい。 お蔭で写真も失敗が多かったとか。
soapbubble photo13

 中学3年生にシャボン玉で遊ばせるというのは、仲のよい友達同士で来ていればまだしも、初対面ではなかなか盛り上げるのが難しい。 予想されたこととはいえ、なかなか大変だったようだ。 相手を選んで、何かもう一工夫が必要だろう。
 ともかく、頑張ってくれたメンバーにはご苦労様といいたい。

 今回もアンケートをとった。 前回に加えて色ガラス細工でシュガースプーンをつくるというテーマが増えたので9テーマであった。 そのうち、巨大シャボン玉が一番面白かったの答えたのが55人中5名、二番目は10名だった。 人気の高かったのは液体窒素、ガラス細工、人工火山。 その次がシャボン玉であった。
 液体窒素の人気は流石である。 火山も、紙粘土のゴジラが火を吹くといった工夫がものをいったのかもしれない。 スライムやメタノール大砲は、中学生になると人気が落ちる。 その点、シャボン玉は中学3年生相手に意外と健闘したように思う。

10月9日
 体験入学の後、いくつかの情報が入ってきたのでここでまとめておきたい。

 まずは、学生の話から。
 このHPを見てくれている卒業生から9月末にメールがあり、「割れにくいシャボン玉」についての情報が寄せられた。 教育テレビの番組を見たという話なのだが、はちみつがいいということだ。 はちみつの主成分は確かブドウ糖や果糖などの単糖類である。 砂糖がいいという話も耳にしたことがあり、糖類がいいのかもしれない。
 このメールの直後、シャボン玉を担当してくれていたK.H.くんもこの番組を見て報告してくれた。 彼の話では、見た目なのでどの程度の割合で混ぜられたのかわからないが、結構大量にはちみつを加えてシャボン玉液をつくっていたという。 それにしても、気に留めてテレビをチェックしてくれていたのが嬉しい。

 さて、これを受けて10月に理科教育MLに流して、ちゃんとこの番組を見た人がいないか尋ねてみた。 結果として、見た人はいなかったのだが、いくつかの情報が集まった。
 ひとつは、かの有名な杉山兄弟の「シャボン玉実験プロ集団杉山コーポレーション」に伝授されたという「安全なシャボン玉液の作り方」である。 情報提供は府中東高校のHさん。 ここにその全文を引用する。

1) 精製水(または浄水器を通した水)1リットルを60度以上に熱し、粉末ゼラチン(商品名ゼライス、ゼリエースなど)5gを入れてよくかき混ぜる。 ただし、沸騰させないように。
2) 40度くらいまで冷ましたのち、台所用液体石けん(注)を240〜280cc入れ、よく混ぜる。 完全に冷ますと固まってしまうので注意する。
3) 30ccの湯に、ガムシロップ10cc、グリセリン10cc、ラム酒10ccを溶かし、2)の液に加える。
4) さらに、無色透明の炭酸飲料(サイダーなど)20〜40ccを泡立てないように入れ、ゆっくりかき混ぜる。
5) 1時間ほど液をなじませて完成。
(注) 合成洗剤でなく脂肪酸カリウムを成分とするもの。 メーカーによって濃度や成分に多少の違いがあるため、多少の加減が必要。 なお、その日の天候によっても左右されるとのこと。 シャボン玉を作る際は、手や道具をよく洗う。 液は小出しにし、一度使用した液は新しい液に戻さない。 保存する場合は密封し、直射日光をあてない。

 この内容、どこかで読んだ記憶がある。 多分ウェブ上だったと思うが、有名な処方なのかもしれない。 結構複雑な組成であり、かなりの試行錯誤を重ねた苦労が偲ばれる。

 また、梅花学園のMさんからは、グリセリンがよいとの情報をいただいた。 これは以前に大阪市立科学館のTさんからも教えたいただいており、8月10日の日記に記している。 広島大学附属東雲中学校のYさんからは、「伊東家の食卓」という番組で浣腸を混ぜると割れにくいシャボン玉ができるという放送をしていた、と知らせていただいた。 浣腸液って何が主成分だったか調べようとしているところに、NTTのFさんから、グリセリンが主成分だからでは、と教えていただいた。 なるほど、それなら話はわかる。

 糖類といいグリセリンといい、複数の水酸基を持った低分子が割れにくいシャボン玉を作るのによいということなのだろうか。 洗剤に含まれる界面活性剤、洗濯糊に含まれる水溶性高分子、それに水酸基を持った添加物というのがセットなのかもしれない。 杉山兄弟の処方に当てはめると、洗剤(石鹸)が界面活性剤、ゼラチンが水溶性高分子、グリセリンやガムシロップが水酸基を持つ添加物に当たりそうだ。 ラム酒とサイダーの役割はよくわからない。

10月10日
 教育テレビの「やってみようなんでも実験」でシャボン玉に関するいろんな実験をしているのを見た。 再放送だったので、以前に学生が見た番組かと思って覗いてみたがどうやら違ったようだ。 どこだったか忘れてしまったが高校の先生が実験名人として登場して、いくつものシャボン玉実験を披露された。

 ひとつは、シャボン玉大量製造機。 木箱に手回しファンを使って空気を送り込み、出口に網を張ってそこにローラーでシャボン玉液を塗っておけば大量に連続してシャボン玉ができるというもの。 すべて手作りの比較的簡単で、それでいて魅力的な装置である。
 これなら、何とか作れないこともない。 来年に向けて、頭に入れておこう。

 続いて、シャボン玉膜の色の観察。 光の加減で虹色に輝いて見えるシャボン玉膜の色の秘密に迫ろうというものである。 非常に薄い膜の表面と裏面で反射した光が干渉しあうのだが、重力のために厚みにむらができるため、位置によって赤く見えたり青く見えたりするという。 紙コップにシャボン玉膜を張り、そこに白色光やフィルターを通した赤色光などをあてて観察すると、その様子がよくわかって面白い。
 さらに、膜を顕微鏡で100〜200倍に拡大してみると、もっと複雑な色が見えるのだ。 どうやら、膜が幾層にも重なり合っていて、そのむらのためらしい。 この現象はまったく知らなくて、非常に興味深かった。

 また、シャボン玉の割れる瞬間を高速度カメラで撮影した映像も見せてくれた。 この割れる様子を肉眼で観察できないか、というのにチャレンジしていた。 長さ5mくらいの雨樋にシャボン玉液を入れ、途中に2つの取っ手をつけたロープを浸す。 取っ手を引き上げて、雨樋を底辺にした長方形をロープで作ってやると、大きなシャボン玉の膜ができる。 この膜を指ではじいてやると、端から端まで膜が割れていく様子がよく見えるのだ。

 最後は、空気砲で大きなシャボン玉を割ろうというもの。 針金で輪を作り、これに布を巻いた器具でシャボン玉をつくる。 直径20〜30cmのものが容易にできるのだが、これにダンボール箱で作った空気砲で割ると、たくさんの小さなシャボン玉になる。 これが結構きれいなのである。
 実は前日の深夜、「探偵!ナイトスクープ」という番組で空気砲を扱っているのを見ていた。 このときは、よくタバコの煙を口から吹き出して輪をつくる人がいるけれど、人がくぐれるくらいの大きな輪はできないだろうか、という実験をしていたのだ。 そこで登場したのが空気砲。 ダンボールに丸い穴を開け、中に煙をこもらせて側面をたたくと(要するに空気砲の要領)見事に煙の輪ができたのだ。 番組では最終的に高さ2m、穴の直径1mという巨大空気砲を使って、これでも成功していた。
 きちんとした輪を作るためには、適当な穴の比率があるようだが、これも面白いネタになりそうだと思っていたところであった。 単純で面白いし、できれば今度の国領祭で試してみたい。


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