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シャボン玉日記 7


10月13日
 今年最後の科学体験学習講座は本校学園祭「国領祭」での体験講座である。

 日程は10月24日と25日の2日間、朝10時から夕方5時までぶっ続けの大仕事となる。 したがって、1グループがずっとつきっきりで対処するわけにもいかず、たくさんの人員が必要となる。 それに技術的な練習がいるテーマは過去の経験者の方がやりやすい。 その点、シャボン玉は形としては整っており、未経験でもあまり準備の必要がないため、過去に行事を手伝ったことのない学生でもなんとかできる。
 その辺りを鑑みて、体験学習講座のまとめ役に学生の人員配置をしていただいた。 ESSSでシャボン玉を担当してくれた3年生女子4人組は体験入学で経験のあるガラス細工に回り、体験入学をやってもらった3年生男子3人組は国領祭の中心的役割を果たしてもらうために環境ホルモンの調査をすることになった。 そして、今回のシャボン玉は1年生の女子5名 T.I.さん、E.O.さん、R.O.さん、A.K.さん、K.M.さんが実行班となる。
 しかし、5人だけでは実際的に人数が足りない。 交代で休憩をとるにしても、3人と2人のグループに分かれた場合、2人組ではカバーしきれないのだ。 また、1年生はバザーなどの手伝いもする必要があり、いつも待機しておけるわけではない。 そこで、ガラス細工担当に移ってもらった3年生女子4人や香りのテーマの準備だけを手伝う予定だった同じく3年生女子2人組、予定からはまったく外れていたが5年生女子2人組にも声をかけた。 他のテーマとの兼ね合いもあるが、手伝うつもりでいるよう約束をして、何とか人数だけは揃う目途がたった。

 また、今日は3年生 K.H.くんとM.M.くんがシャボン玉製造器の調整をした。 紐がよれていたのを直し、滑車がスムースに動くことを確認したのだ。 7月初旬に設定し、その後、練習を含めて何度となく上げ下げしてきた滑車は、ややさび気味でキリキリ音がするのだが、動きそのものには問題ないようだった。

10月24日
 国領祭が始まった。 天気予報では前日からの雨が昼頃まで続くということだったが、朝にはほぼあがってくれた。 湿度は高めで、シャボン玉作りには悪くない天候である……はずだ。

 朝9時に1年生の女子5名に集まってもらい、客寄せの宣伝ポスターを張る。 1年生の若い感覚のポスターは写真ではよく見えないが、なかなか趣向にあふれたものである。
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 続いて、シャボン玉液作りとシャボン玉製造器の設定をする。 組成は9月の体験入学と同じく洗剤:洗濯糊:水=1:5:7とした。 しかし、なかなか伸びない。 液が水っぽくて、はじけた後にぼとぼととフラフープから液が垂れる。 気温が低いので相対湿度はそこそこあっても、絶対湿度が低いせいなのかもしれない。 霧吹きでシャボン玉製造器のおいてあるホールの湿気を増やしてやると、一時的に伸びはよくなる。 どうにかそうやってごまかしながらやるしかないが、1年生は一度練習をしたきりで細かいことはよくわかっていない。 私がそばについていて、細かく指示をしてやらないといけないようだ。
 屋外でシャボン玉遊びをさせる方は、この程度の液でもあまり問題はない。 ただ、やはり垂れてこぼれる液が多いのが気にかかる。 無駄に液を消費するだけでなく、地面に落ちると足元が滑りやすくなるのだ。 今回は老若男女様々な人が目的を異にしてやってくるので、特に小さい子供やお年寄りには注意を促さないといけない。

 10時を過ぎるとぽつぽつと客が現れ始めた。 予定では4時までの6時間、客がやってくる限り働きつづけないといけない。 最初の3時間は1年生のT.I.さん、R.O.さんに加えて、3年生のM.I.さん、N.U.さんに手伝ってもらった。
 シャボン玉製造器で巨大シャボン玉に入る方を担当する組と、外でシャボン玉遊びをするのを担当する組に一応は分かれる。 シャボン玉遊びをしながら客寄せし、巨大シャボン玉の方に誘って盛り上げる。 ただ中に入れた上げるだけではあっという間なので、上げ下げもさせてあげる。 シャボン玉遊びも大きなのを作るこつを見せてあげるのである。 それだけでなく、シャボン玉の伸び具合や量を見ながら新しい液と取り替えたり、泡立ち過ぎたら泡を取り除いたり、液がこぼれたら拭きとって滑らないように気をつけたりもしないといけない。 結構な重労働である。
 しかも、子供たちに巨大シャボン玉の上げ下げをさせてやると、中には力任せに引っ張る子がいて、滑車から紐がはずれるなどのトラブルが続出。 そのたびに脚立に乗って調整しなおさなければならなかった。

 1時からはE.O.さん、A.K.さん、K.M.さんの1年生3人組に交代。 シャボン玉遊びに興じるのは子供だけでなく、10代後半から20代前半と見受けられる人達も、子供に戻った気分になれる、と楽しんでくれた。 それ以上の大人の方はなかなか子供に遠慮してか遊んではもらえなかったが、巨大シャボン玉には感動されていたようだ。
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 大きなシャボン玉を作ってそれに息を吹きかけると中に小さなシャボン玉ができる、というのをある女の子が成功させていた。 この子は何時間も飽きずにひとりでシャボン玉遊びを楽しみ、どんどんうまくなっていって遂に二重シャボン玉にまでたどり着いたのだった。 これには私たちも驚かされた。 子供の遊びに対する集中力というか順応性はすばらしいものがある。

 4時、無事に1日目終了。 簡単に後片付けをして、明日に備える。 液が水っぽかったせいでかなり予定より多く消費した。 明日にはどうこうできるものではないが、やはり液組成はまだベストではない。 あるいは、季節によっても変える必要があるのかもしれない。

10月25日
 国領祭2日目。 同じく9時から液を作り始める。 今日は10時から11時までと12時から2時までを1年生 E.O.さん、A.K.さん、K.M.さん、11時から12時までを3年生 M.I.さん、T.S.さん、A.T.さん、C.H.さん、2時から4時までを1年生 T.I.さん、R.O.さんと5年生 M.S.さん、S.N.さんという担当。

 ところが、早速問題が現れた。 昨日と同じように作ったはずなのに、まったく液が伸びないのだ。 確かに昨日より晴れていて湿度は低い。 しかし、液の状態からして粘りがない。 何故だろう。 ホールを密閉して霧吹きで湿度を高めても、少し良くなる程度。 私は何度も巨大シャボン玉の上げ下げをやってきたので、シャボン玉の出来具合を見ながらどういうタイミングで操作するとうまくいくかのこつを大体体得しているつもりである。 それでもせいぜい子供の頭までくらいしか上がらない。 これは危ない。 急遽、液組成をESSSで試したものに変えて作りなおしてみることにした。 とはいえ、まったく勝算はない。
 屋外で遊ぶ方もやや持ちが悪い感じがするが、それほど問題はないので、そちらで遊んでもらうことにする。 日曜日なので昨日よりも多くなると思った客足が、意外と増えないのをよいことに調整に専念する。 新しく作った液を試してみると、ややよくなったようだ。 今日は調子が悪いんです、といちいち断りながら続けることにした。 それでも午後になって多少気温も高くなると伸びがよくなってきた。
 まったく、いろんなファクターがありすぎてまだまだ把握できていないことを暴露する結果となった。

 さて、客足は結局ずっと伸び悩んだ。 どうやら別の場所で開かれているイベントにとられたようだ。 それなら仕方がない。 高専まで来てくれた人をどんどん客ひきするまでだ。
 そんな中にいろいろとシャボン玉について尋ねてくる人がいた。 幼稚園の先生や保育所の保母さんのようで、どうやったらうまくつくれるのか、いろいろ試したけれどうまくいかなかったという。 子供たちを楽しませるために、あちこちで苦労されていることが伺える。 また、杉山兄弟が香川県に来たときに見に行ったという人もいた。 嬉しそうに語るその口調に、シャボン玉には子供から大人まで惹きつけてやまない魅力があることを感じさせられた。

 4時には終了。 後片付けをして5時頃には解散である。 学生には、2日間ご苦労様といいたい。 学科の体験講座としては約600名の入場があった。 巨大シャボン玉も何100回、あるいは1000回以上も作ったことになる。
 体験講座自体のテーマは、巨大シャボン玉の他、下記の通りであった。

1) 液体窒素の世界
2) 香りの成分
3) 人工イクラ
4) 周期律表に沿った元素の展示
5) ガラス細工のスプーン
6) 葉脈のしおり
7) メタノール大砲
8) 環境ホルモンに関する展示
9) 人工火山

大成功とはいえないまでも、まずまず成功に終わったことを喜びたい。

 以上で今年1998年の科学体験学習講座はおしまい。 来年またお目にかかりましょう。


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