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シャボン玉日記 5


8月21日
 いよいよ、愛媛サマー・サイエンス・スクールが始まった。 参加者は全部で131名。 そのうち小学5,6年生が100人である。
 今日が開校式で、オリエンテーションの後、本校校長の「インターネットの世界」と題する講演と実際のインターネット体験が催された。 夜はキャンプファイヤーで一日目を終える。
 各学科に分かれての実験実習は明日の午前中である。 その場でこの巨大シャボン玉をプレゼンテーションする。 今日は、直前の予行演習を行うことにした。

 午前中に担当する学生スタッフが集合し、まず、手順どおりにシャボン玉液を調合した。 液はマグネティックスターラで40〜50分間かき混ぜ、十分均一にさせる。 その間に、シャボン玉製造器をセッティングした。 明日は、巨大シャボン玉の中に入っている姿をポラロイド写真に撮って、それを葉書の裏に名前入りでパウチすることになっている。 その撮影用に背景として暗幕を張った。 液がよく混ざったところで液プールに注ぎ入れ、いざ練習開始となる。
 ところが、なかなか始めのうちがうまくいかない。 何度も何度もやっているうちに伸びるようになっていったが、やはり雰囲気の問題だろうか。 湿度が高くならないとうまくいかないようだ。 明日に不安を残しながら、途中で液の改善をすることも念頭において一応オーケーとした。
 ともあれ、うまくシャボン玉の中に入れるようになったので写真を撮るタイミングの練習を始めた。 シャボン玉が消えた瞬間ではまったく意味がないし、パウチにまでしようというのだから、できるだけきちんと撮影してやりたいからだ。 写真撮影はM.I.さんの担当。 本人は心配そうに始めた。 しかし、結構うまく撮れるようだ。 練習用の10枚のうち失敗は1枚のみ。 初めてにしては上出来であろう。
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 午後からは全体の打ち合わせがあった。 参加者は5つの学科に振り分けられるので、明日担当することになるのは26名。 それを3〜5人の班に分けて、7つのテーマを順繰りに回ってもらう。 折角なのでテーマを列記しておこう。

1) 七宝焼きのキーホルダー
2) スライム作り
3) 人工イクラとバター、チーズ作り
4) 香りのキャンドル
5) メタノール大砲
6) 液体窒素の世界
7) 巨大シャボン玉

 ひとつのテーマを15分くらいかけて約2時間でひと通り体験できることになる。 全部で3時間予定されているので、残りのうち30分程はもう一度やってみたい実験を再度できる時間とする。 その後、全員を集めて人工火山の演示実験をやっておしまい。
 そして一番大事なことを全員に告げる。 子供たちと一緒に楽しもう、である。

 15分を巨大シャボン玉だけではもてあますので、普通にシャボン玉を作って遊ぼうという時間も設けることにしている。 針金で輪を作り、包帯やキムワイプというちょっと高級なティッシュペーパーを巻いて用具は出来上がる。 これと市販のシャボン玉用ストローを用意しておいて、自由に遊んでもらおうというわけだ。
 実際にやってみると、針金を使えば直径30cmくらいのものは楽々できる。 そういえば、去年、砂糖やグリセリンを混ぜていろんなシャボン玉を試したときには、床を転がったり跳ねたりするのができたという。 その記録がきちんと残っているかどうか疑問だが、ストローで吹いて作るシャボン玉にもバリエーションを試してみたいという気持ちが、もこもこと湧いてくる。
 さて、学生スタッフはそんなシャボン玉遊びのリハーサルをしていたはずだが、いつの間にか楽しいアレンジを思いついていた。 小さなシャボン玉をたくさん舞い散らせている前で、巨大シャボン玉の中に入ってもらおうというのだ。 写真に撮ると小さなシャボン玉はあまり目立たないが、その場ではなかなか幻想的な(というのは言い過ぎかもしれないが)雰囲気となる。
 巨大シャボン玉の中に入る子供たちにストローを持たせて、自分で吹かせても面白い。 そのうち、シャボン玉液プールにドライアイスを入れてスモークをたくようなのもいいという案がでた。 さすがに明日には間に合わないが、若い頭脳からひらめくアイデアは非常におもしろい。
 気になる点も指摘された。 照明の関係でシャボン玉膜があまりはっきり映っていないのだ。 特に向かって右側が見えにくい。 懐中電灯で照らしたらどうか、との案も出たが、全体を照らせるようなものがすぐに見当たらなかったのと、膜を見やすくするほど照度が強いものだと、ただでも蒸し風呂状態なのが、耐えられなくなりそうだったので、今回はパス。 次回までの懸案事項とする。

 以上で、明日の本番に多少の問題点を抱えながらも、リハーサル終了。 後は、どれだけ小中学生を盛り上げられるか、だ。 学生たちの手腕に期待しよう。

8月22日
 愛媛サマー・サイエンス・スクール、実験当日である。 実験のスタート時間は朝9時であるが、シャボン玉液を調製する必要から8時に集合する。 なんと言っても、きちんとシャボン玉が伸びてくれるかどうかが一番の不安材料であった。 フラフープ引き上げ役のC.H.さんも、ちょっと堅い表情。 しかし、今日は多少湿度が高かったせいか、非常にうまくいった。 よしよし、本番に強いということはいいことだ。

 さて、9時過ぎになって子供たちがやってきた。 元気な声に、こちらもがんばろうという気になる。
 班ごとにやってくる子供たちをひとりずつ巨大シャボン玉の中に入れて、何かポーズをとって、と声をかける。 恥ずかしがってか、あるいは、目の前でシャボン玉膜ができる様に驚いてか、呆然とした表情で突っ立っている子もいれば、"ピース"はもちろん、"シェー"やらボディビルのポーズやらをとるお茶目な子もいた。 さすがに、"だっちゅーの"のポーズをして、のリクエストに答えてくれる子がいなかったのが、残念である。
 下の写真は実際の現場だが、タイミング悪くシャボン玉膜のはじけた後に撮影したものだ。 まわりの小さなシャボン玉は手前にいるI.S.さんとT.S.さんがつくって飛ばしたものである。
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 液がこぼれて足元がすべりやすくなるので、足拭き用の雑巾を用意しておくことも大事である。
 こうやって中に入った姿をポラロイド写真に撮ると、みんな像が出てくるのを待ちきれずに一生懸命印画紙を振る。 手で振ると早く像が出てくるというのは、いったいどこで覚えてくるんだろう。
 できた写真は一時預かって、名前入りのカードにパウチしてからひとりひとりに進呈する。
 子供たち自身にひもを引っ張らせて、巨大シャボン玉をつくるというのも受けていた。 やはり、自らが作業して体験するほうが彼ら自身も楽しいのだ。

 このスペースは風が吹くとシャボン玉膜が流されるし、湿気の高いほうがうまくいくというので、非常に蒸し暑い。 そこで全員の撮影が終わると、外に出ていわゆるシャボン玉遊びをさせることとする。 一応は、学生スタッフがやり方の見本を見せるのだが、あっという間に自分のものにしてしまう。 以下がその写真だが、直径50cmくらいのも簡単にできるし、細長いものなら優に2m〜3mのものも作れる。
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 放っておいても、いつまででも遊んでいる。 足元が滑りやすいのさえ気をつけていればいいので、こちらも気楽である。

 こうして、次々とやってくる子供たちに実験を楽しませてひと通りが終了した。 そして、残り時間をどこにでも好きなところに行っていい、という時間になった。 去年のアンケート結果の感触から結構たくさん来るんじゃないかと予想していたのだが、あにはからんや、意外と少ない。 学生スタッフは、残念そうな寂しそうな顔をしていたが、何人かやってくると嬉々として子供たちの対応にいそしんでいた。

 子供たちにアンケートを取ってすべての予定を終了し、後片づけをして一息つくと、学生たちは疲れた表情ながら、無事に過ごせてホッとした様子だった。 子供たちと一緒に楽しくやろう、というモットーも貫けた。
 アンケートの結果、人工火山を含めた8つのテーマのうち、巨大シャボン玉が一番面白かったの答えたのが26人中3名、二番目という子も3名だった。 人気の高かったのはメタノール大砲と液体窒素。 続いて、スライムと人工火山となった。 派手な爆発ものはやはり注目されるのだ。 昨年に比べてシャボン玉の順位が下がったようだが、他に面白いテーマが増えたからだろう。 (そう、思いたいだけなのかもしれないが。)

 ともかく、ESSSは終了。 次は9月12日の体験入学だが、それまでに今回の反省点や新しいアイデアをまとめて、さらにグレードアップを目指すつもりである。


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