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シャボン玉日記 3


7月10日
 準備に関わってきた男子3人組と当日実行班の女子4人組を集めて、最終チェックを兼ねた引継ぎを行った。
 最終といいながらシャボン玉液は昨年来、久しぶりに作るので今年初めての実験というのが正確である。 しかし、これでうまくいけば、当日までほとんどすることはなくなる。
 私自身は別の仕事があったので、途中まで学生にまかせきりであった。 その間にいろいろと問題点が見つかったようだ。

 初めにシャボン玉液として洗剤と洗濯糊と水を混ぜ合わせ、バケツに入れてマグネティックスターラで30分程度撹拌する。 よく混ざってないと上手くいかない、というのが昨年の経験で分かっている。
 次に、床にベニヤ板を敷いて滑らないようにし、シャボン玉液プールを乗せる。 フラフープを上下させて位置決めをし、プールに液を注ぎ込む。 そしてフラフープを液に浸して準備完了である。
 さあ、紐を引いてフラフープを上げれば巨大シャボン玉の出来上がり・・・のはずだった。
 ところが、うまくいかなかったのである。

 原因はいくつかあった。
 まずは最大の問題、シャボン玉液の伸びが悪いという点である。 フラフープを数10cm上げると、シャボン玉が途切れてしまうのだ。 液自体もさらさらしていて粘りが足りないように思える。 液の配分の記憶違いだったのか、と悩みはじめることになった。
 次はシャボン玉液プールの構造上の問題。 フラフープを上に引き上げると膜も上に引かれて樋の端を伝ってくる。 ところが、隣り合う樋と樋の間に隙間があるために、すぐにシャボン玉がはじけてしまうのだ。 上に乗せている樋をはずしてやってもシートが型くずれしなかったので、そうすることでこの件は解決できた。 その結果、樋を二重にしたときにできたシートと樋との隙間もなくなり、液量が少なくて済むというメリットもでてきた。
soapbubble photo3
 後はアクシデントと言った方がいいのだが、天井にフックで取り付けていた滑車が紐を引いた勢いで落ちてきて、危うく下にいた学生が怪我をしそうになった。 どうやら、フックを天井板にしかねじこんでなくて、それが抜けてしまったようだ。 そこで、滑車を取り付ける位置を変えて針金でくくりつけてやることにした。 ところが、これも何回か繰り返しているうちに針金がねじ切れてしまい、また滑車が落ちてきた。 今度は学生の肩をかすった。 本当に危ないところだった。 最終的には太い紐でくくることでカバーした。 実際に小中学生が来ているときに事故が起こっていたら大問題だっただけに、学生には悪いが、練習で起きたことは不幸中の幸いであった。
 この一連の対応はすべて学生が自主的に行ったものである。 試行錯誤はあるものの、なかなか問題解決能力もあり、勉強にもなったと思う。
 ただし、やはり事故の可能性があるので、近くにいなければいけないと痛感した。 (念のため、そんな遠く離れていたわけではなく、実験室をはさんで2つ隣りの部屋にはいただけれど)
 男子の方がいろいろ改良を試している間、女子は外でシャボン玉遊びを始めていた。 といっても、人の入れるシャボン玉だけでは間がもたないからシャボン玉を作って遊ばせるというのも企画のうちに入っているのだ。 アルミ製の太くて柔らかい針金を輪にして包帯を巻き付け、液に浸してシャボン玉をつくるのである。 できたシャボン玉を濡れた手でつかみとるなど、彼女達なりに小中学生相手に楽しませる方法を考えていたようだった。

 さて、液の配合が正しかったのかどうか、自信がなくなってきたという問題が残されている。 私自身はそんなわけないと思うのだが、実際に伸びが悪いのだからしょうがない。 配合比を変えて試してみようかということになり、そのためには洗濯糊が足りないのでそれを調達してくることにした。
 ところが、そうこうしているうちに次第にシャボン玉が上手くできはじめたのだ。 近くを通り掛かった先生は、何度も練習をしているうちに液が飛び散ったりして周りの湿度が高くなったせいじゃないかと言われる。 そういえば「雨の日はシャボン玉ができやすい」という話を、つい最近理科教育MLでみたばかりである。 そしてこの場所も、風が吹くとシャボン玉が流されるので、閉め切っているのだ。 そのせいで蒸し暑くて仕方がないという事実も無視できないのだが、これは切実な余談である。
 しかし、本当の原因の判断がつかないので別の配合にした液を少し足してみた。 すると確かに前より安定したシャボン玉ができる。 う〜ん、迷いが・・・。
 これについての最終結論は来週にまわすことにした。

 ともかく、うまくできるようになっている間にシャボン玉を作る練習、ポラロイド写真を撮るタイミングの練習などを実行班の女子にさせた後、片付けの手順も引き継いで終了した。

7月13日
 液の配合比を決定する実験をする。
 今日最初に用意した液は明らかに洗剤の濃度が高くて臭いもきつく、粘りもありすぎた。 一応、試してみたがまったく伸びが悪い。 その上、膜が割れると液が飛び散るのだが、それが重合しかけの繊維のような塊になってしまう。 はっきりいって気持ち悪い。
 水で薄めてみたが、あまり伸びがよくならない。 何が悪いのか、どうしたらいいのか、だんだんわからなくなってきた。 ところが、それでも何度か続けていくとうまくできるようになった。
soapbubble photo4
 何らかの熟成が必要なのかもしれないし、あるいは周囲の湿度が影響している可能性もある。 しかし、昨年は数回引き上げればうまく伸びるようになっていたはずだ。 それに、液の粘り具合やシャボン玉のはじけ方などが感覚的に昨年と違っているように思える。 どうしても、その配合が思い出せない。 昨年の資料をあさったが、配合に関するメモは出てこない。
 悔しいけれど仕方がない。 明日もう一度だけ別の配合で試してみて、結論を出すことにする。

 一方、床がすべるということでベニヤ板を敷いていたのだが、それでもかなり滑りやすくなってきた。 お立ち台のところは厚めの板であるが、ここはあまり滑らない。 しかし、その周りの薄い板の上がよく滑るのだ。 液が濃いのが悪かったのか、何度かやっているうちに染み込んできたのか。 いずれにしろ危ないことには変わりないので、液がこぼれやすいところは厚めの板に替え、また当日は足ふき用のぞうきんを準備することにした。

7月14日
 明後日から夏休み。 実家に帰らないといけない寮生もいるので、準備段階としての最終確認を完了する必要がある。 昨日どうしてもはっきりしなかった液の配合を決定しなければいけないのだ。 たとえベストでなくともできるだけベターな配合を確定することを目標とする。

 昨日の解散間際に、かすかな記憶から思い出してきたある配合比を試してみることにした。 もし、これがうまくいかなかった場合、先週末と昨日の結果を参考にして最もよかった、というか、一番ましだった配合を選ぶしかない。
 早速試してみた。 何度かやってみるが伸びが悪い。 しかし、液の感触は悪くない。 そして十数回上げ下げしているうちに天井まで伸びるようになった。 しかも、シャボン玉の安定性やはじけ方などが昨年の感触に近い。
 学生の顔にもようやく満足気な表情が浮かんだ。 どうやらこれでいけそうだ
 結果としてシャボン玉液の配合は、洗剤:洗濯糊:水=3:10:20 の体積比を最適とすることになった。

 上手く伸びるようになったシャボン玉に興味を示して、当日実行組を含む同学年の学生が何人かやってきた。 そこで、練習を兼ねて彼らに中に入ってもらい、シャボン玉を作ってみた。 紐をひく係は昨年はT.Y.くんだったが、今回はC.H.さんにやってもらう。 引くのがゆっくり過ぎても早過ぎてもうまくできない。 適当な感覚を身につけてもらうのには、ある程度の練習が必要だ。
soapbubble photo5
 ポラロイド写真を撮る係は、昨年私が担当していたのM.I.さんにまかせることになっている。 ファインダー越しに、シャボン玉の膜の感触からまだ持ちそうかどうかを見極め、また中に入っている人のポーズを確かめて、シャッターを押すタイミングを計らないといけない。 シャボン玉がいつも長持ちするように作れれば問題ないが、フラフープを上に引き上げてから平均3秒程度、短いときには1秒も待たずに消えてしまうので、下手をするとちょうど破裂した直後という間抜けな写真になってしまうのだ。 これこそ経験がものを言う。 フィルムがまだ手元に届いていないので、実際に練習ができなくて残念である。
 残りの2人は液の様子を見て追加したり、やってきた子供たちを盛り上げる役回りである。 もちろん、盛り上げは全員で協力しないといけないのだけれど。

 さあ、これで準備は万端。 後は本番を待つばかり。
 ESSSは8月22日。 前日の午前中に直前のチェックをして、午後は他のテーマとの流れを確認する。 それまではとりあえず待機に入る。 是非、今日までの準備を十分活かして成功させたい。


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