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シャボン玉日記 1


5月上旬
 体験学習講座担当の教職員が集まって各行事に実施するテーマを検討した。
 愛媛サマーサイエンススクール(以下、ESSS)は小学校高学年から中学生までを対象にし、夏休みの最後に行われる。 昨年、一昨年の実績からおそらく20〜30人を相手に半日時間を費やすことになる。
 学校見学会&体験入学(以下、体験入学)は9月上旬に、多くは本校を受験希望している中学3年生が対象となる。 これは午前の部と午後の部に分かれるが、大抵午前の方が多くて20名程度、午後はその半分くらいか。
 国領祭&体験講座(以下、国領祭)は、今年はやや早目で10月下旬に予定されている。 こちらは学園祭に併設されており、老若男女を問わず、来る人は拒まず形式で行う。

 このような各行事の性格を考えると、ESSSと体験入学はほぼ同様のテーマとし、国領祭は少し形式を変えるのが有効である。 前者は、20〜30分でできる実験数テーマを巡回してもらうのがよいだろう。 一方、後者の場合、たくさんの人数をさばかないといけないので、お金も時間もあまりかからないものとする必要があって、実験に加えて展示も用意することになる。

 シャボン玉は、とりあえずすべての行事で実施する方向で動き始めることになった。

5月下旬
 担当学生が決まった。 昨年、装置を考案した新3年生3人組である。
 私は彼らの担任でもあるし、やりやすそうでよかった。

 早速、製造中止になった洗剤に替わるものを探すために、メーカーに問い合わせてみた。 ところが、その洗剤は現在も製造中という返事。
 う〜ん、どういうことだったんだろう? まあ、何にしろ一安心である。

6月下旬
 中間試験も終っていよいよ本格的に準備開始である。 しかし、7月17日からは四国地区高専体育大会があり、その1週間前は忙しくてこちらに時間が裂けない。 1ヶ月間、ほとんど何もしなかったのだから仕方ないが、短期間の勝負である。

 ESSSではシャボン玉を含めて8つのテーマで実施することになっており、現段階で総勢27名の学生を動員する予定である。 夏休みということもあって、この学生集めが大変なのである。
 特にこの期間は寮が閉まってしまうので、寮生であるM.M.くん、T.Y.くんの両名は当日参加できない。 準備は彼ら3人にやってもらうとして、当日の実施要員を確保する必要がある。
 そこで、同じく3年生のM.I.さん、I.S.さん、T.S.さん、C.H.さんに担当してもらうことになった。

6月29日
 いよいよ具体的に始動である。
 まずは、シャボン玉製造器の再設定から検討する。 改装工事のために、場所を移動しなければならないかと思っていたが、なんとか同じところでいけそうである。 装置そのものも基本的には昨年と同じである。 完成予想図を見て頂きたい。
soapbubble scheme
 フラフープを2つ用意し、片方には包帯を巻いてシャボン玉液がよくしみ込むようにしておく。 別のフラフープを天井に固定して滑車を3ヶ所に取り付ける。 これにそれぞれ紐を通して、包帯巻フラフープに結びつけて宙づりにする。 紐の他端は結んで1本にまとめた上、2つの滑車を介して持ち手とする。
 シャボン玉液を溜めるためのドーナッツ状プールを用意し、その中央に人が入れるようにしておく。 中に人が立った状態で、包帯巻フラフープをシャボン玉液に十分浸し、紐を引っ張るとフラフープとプールの間にシャボン玉の膜ができて、巨大シャボン玉の中に入れるというわけである。

 今回の最大の検討ポイントは、足元のドーナッツ状プールである。 昨年は、ゴム管とビニールシートを使った簡易プールを組み立てた。
 直径約5cmの真空用ゴム管をつないで円形にしたものを大小2つ用意し、二重円状に並べた上にビニールシートをかぶせる。 ビニールをできるだけゴム管の下に敷くように絞り込んで細紐で縛り、二重円の内側にダンボールを敷いてここをお立ち台、環状部をプールとした。
 比較的簡単にできるのだが、縛ってある細紐が緩んできて液が漏れたり、ビニールシートがしわになって液が十分フラフープに浸からなかったり、といった問題点があった。 これを克服するための提案を募った。

1) ベニヤを底板にして木片を組み上げて二重の輪をつくる。
2) 雨樋(あまどい)を円形に並べる。
3) 発泡スチロールをくり貫いて円形のプールをつくる。
4) 子供用のビニールプールを2つ重ねる。
5) 洗濯機の排水管のような蛇腹のホースの太いものを半分に切って円形につなぐ。

 このうち、2)の案がもっとも実現可能性が高いようだということで一致した。 そこで翌日、雨樋を実際に見に行くことにする。

6月30日
 雨樋を使ってシャボン玉液プールをこしらえることになったので、ホームセンターに雨樋を見に行く。 しかし、ここには底の丸い軒樋(のきどい、これが正式名称らしい)しかない。 できれば底の平たいものと思っていたので、ホームセンターの店員に樋の専門店を教えてもらった。

 行ってみると、専門店というよりは問屋のような店構え。 早速、見せてもらう。
 平底の樋には左右対称のものと非対称のものがあって、後者の方が種類が多い。 大きさも幾種類かあったが、底面の幅が75mmのものと90mmのとのどちらかがよさそうだ。
 問題は、樋をつなげて円形にしなければならないのだが、できるだけ簡単かつ漏れがないようにするにはどうしたらよいか、である。 聞いてみると、樋をつなげるコネクタには90°のものと135°のものがあるらしい。 135°なら8角形にすればよいことになるが、75mmのタイプしかない。 その場合、きちんとフラフープが入るかどうかが疑問である。 そこで、サイズだけ控えて学校に戻り、計算してみることにした。

 まずは、グラフ用紙に作図させてみる。
 フラフープが内径700mm、リングの幅25mmとする。 外径750mmというわけだ。 樋を8角形に並べたとき、内側の頂点がフラフープと20mmの余裕をもつように書き込んでいく。 紐で吊り上げて上下させるし、フラフープ自体も多少ゆがんでいるので、最低限このくらいは余裕がほしいわけだ。 こうしたときに、8角形の外側の辺がフラフープの外径をおさめられればよい。 果して実際は……う〜んギリギリだ。 本当か?
 計算してみる。 中心と樋の内側の8角形の頂点の距離をフラフープの内半径より20mm短い330mmとする。 このとき、中心と樋の外側の8角形の辺との最短距離は、330cos(45°/2)+75=380mm。 これはフラフープの外半径375mmより5mm長い。 やっぱりあまり余裕がない。
 90mmのタイプで135°のコネクタがあれば、20mmの余裕ができることになる。 これなら何とかなるかも知れない。 本当にコネクタがないか、もう一度問い合わせてみることにする。

 さて、もしコネクタがなくてあきらめざるをえないときは、どうするか。 接着剤とパテでつぎはぎしていくしかないようである。 果して、漏れないようにつなげられるかどうか。 こればっかりは、やってみないとわからない。
 樋を二重にして、間にビニールシートを挟めば、接着剤を使う必要がない、という案も出た。 なるほど、これなら漏れの心配はほとんどないし、樋をばらばらにできるので持ち運びや収納には都合がよい。 でも、使用後にビニールシートを洗うのが結構大変なのである。 まあ、これも試してみようということになった。

7月1日
 90mm軒樋用の135°コネクタは特注になるそうだ。 2週間はかかるという。 残念ながら時間がない。 そこで、接着剤でつなぐことを前提に、90mmタイプの樋3.6mを2本注文した。
 ただ、時間がないというのは、高専体育大会と夏休みのせいで寮生が来れなくなるという意味で、ESSSそのものまではまだ余裕がある。 接着剤方式が難しい場合、コネクタを特注してもらうことも考えに入れておく必要はある。

 洗剤300mL入り14本、洗濯糊750mL入り3本を手元に確認。 問題は、この市販洗剤が近くのスーパーなどで売っていないということだ。 用度係に頼んで捜してもらうことになっているのだが、もう少し待ってくれという返事。
 4.2Lの洗剤があれば約25Lのシャボン玉液ができる計算になる。 1回に使う体積は樋をどう組むかによって変わるが、多めに見積もって6Lとすれば、経験上これで約半日もつとしてほぼ2日分あることになる。
 ESSSは半日だけだし、練習と予備をあわせてなんとか当日までに手に入らなくても、何とかもちそうである。 ただし、体験入学のときまでは賄えないので、できるだけ早目に確保する方がいいには違いない。


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