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シャボン玉日記'99 その3


7月27日
 問題が起こった。 昨年まで使用していた濃縮タイプ洗剤 ママポケッティ1/2(ライオン)が製造中止になったのだ。 昨年もそういう噂が流れていたが、今年は本当にそうなってしまった。 そこでこれに替わる洗剤として何がいいのかを確かめる必要が生じた。 どれでもいい、というのなら問題はないのだが、微妙な成分や濃度の差が影響すると困るので試してみることにする。

 用意したのは4種類の濃縮タイプ洗剤。 スーパーチャーミーコンパクト(ライオン)、洗浄力ファミリー(花王)、ジョイ(P&G)、キッチンナチュールコンパクト(第一石鹸)である。 他にもあったけれど、手にやさしい成分だの除菌ができるだの付加価値がついている分だけ単価が高かったのではずした。 これらを昨年の余りで残っていたママポケッティ1/2と比較することにする。
 各洗剤を使ってベスト配合シャボン液を作り、大きく安定なシャボン玉ができる洗剤を選ぶのだ。 結論から言うと界面活性剤濃度の高いものほど安定なシャボン玉ができるようだった。 すなわち、

ジョイ(43%)>ファミリー(41%)>ポケッティ(38%)>ナチュール(37%)>チャーミー(35%)

で、安定度ではファミリーとポケッティが逆転しているようにも見えたが、大差はなかった。
 この結果から、洗剤としてジョイを使うことに決定した。

7月30日
 今、ベスト配合と読んでいるシャボン液は巨大シャボン玉用のものである。 今年は床で跳ねるシャボン玉をはじめ、いろいろなシャボン液開発を試みることにする。

 まずは、壊れにくい跳ねるシャボン玉である。 基本はベスト配合の洗剤+洗濯糊+水とし、これに何か別の成分を加えることにする。 用意したのはグリセリン、ゼラチン、寒天の3つ。
 一番効果があったのはグリセリンだった。 加える量を調整してやることで跳ねることにも成功した。 しかし、毎回毎回うまくバウンドしてくれるわけではない。 膜が厚めだと落ちるのが速すぎるし、薄いと当然のごとく割れやすい。 もちろん床の状態も関係する。 濡れているとくっついてしまうし、でこぼこがあると割れやすい。 なかなか難しいようだ。

 とりあえず、洗剤:洗濯糊:グリセリン:水=3:10:10:10が一番壊れにくいことがわかった。

8月3日
 跳ねるシャボン玉の配合をさらにチェックする。 グリセリンの配分をもう少し細かく変えてみたのだ。
 しかし、うまくいかない。 先日の配合でも全くだめなのだ。 今日は湿度が低いので、そのせいなのかもしれない。 天候に左右されるのがこの実験の最大の問題点である。 しかし、まさか恒温恒湿の部屋でやるわけにはいかないし……。 何度か試したがうまくいかないので、今日のところは断念。

 その代わり、K.H.さんが、シャボン玉で有名な杉山兄弟のシャボン液レシピを調べてきたので、それを試してみることにする。 本当はガムシロップやラム酒を入れるらしいが今回は次のようにした。

・水 1000ml
・洗剤 250ml
・はちみつ 10ml
・ゼラチン 5g

早速試してみると、なんとも不思議な感じのシャボン玉ができた。 伸びはそんなによくなくて安定性にも欠けるようなのだが、割合大きなものができるし、何より妙に弾力があって風に吹かれてものすごく変形しやすいのだ。 見ていて飽きないシャボン玉である。
 これに洗濯糊やグリセリンを加えてやれば安定なものができるかと思って試してみたが、あまり変化はない。 ややグリセリン入りのものがよかったような気がする程度。

 混ぜる成分によって意外に面白いシャボン玉ができることが示唆されて、非常に興味深かった。


8月5日
 再度、杉山兄弟レシピのものに挑戦する。 はちみつで代用していたガムシロップを用意した。 また、前回入れなかったラム酒の代わりにウィスキー10mlを加えて試してみた。 結果は大差なし。 ただし、風の具合によって変形の程度が違うので、やはり天候まかせなところが露呈する。
 コントロールは難しいものの、もう少し調整していけば使える可能性があるので候補として残しておくことにする。

 さて、続いてヘリウム入りシャボン玉を試してみることにする。 空気でなくヘリウムを中に入れたシャボン玉を作ると、比重が小さいのでシャボン玉が浮き上がっていくに違いないというわけ。
 早速、ボンベにビニルホースをつなぎ、その先にシャボン液をつけて膨らませてみる。 するとちゃんと膨らんでいってホースから離れると、すごい勢いで上へあがっていった。 ホースをシャボン液につけてぶくぶく泡を作らせると、やがて泡の塊がふわりと浮いて上に飛んで行った。

 なかなか面白いけれど、調整が難しいしどう見せるかの工夫がいりそうだ。 そこでせっけん膜流量計の原理を利用してやろうということになった。 せっけん膜流量計というのは、トの字を上下さかさまにした形のガス流路を使った簡易型ガス流量測定器具である。 流路下部にせっけん液溜めておき、枝管からガスを流しこみバブリングさせると、せっけん膜ができてガスに押し流されて流路を上にあがっていくので、その膜の動く速度から流量を測ろうというものである。
 ただし、その場合、膜と膜の間が短すぎて小さなシャボン玉しかできないので少し手を加えてやる必要がある。その装置の概略が下図である。
herium soapbubble
 手持ちのガラス管を使って早速つくってみる。 バルブはシャボン玉の大きさの調節に、液溜めはバブリングする位置のレベル調節に必要である。 とりあえず簡単なものをつくってやってみたところ、ガスの流量やバルブ調節にコツはいるがなんとかうまくできそうだ。
 あとは細かな調整や飾り付けをしていけば、なかなか面白い見世物になりそうである。


8月24日
 ヘリウム入りシャボン玉発生装置をつくる。 装置本体は前回考案したせっけん膜流量計を応用したものであり、下のようなものができあがった。
herium soapbubble2
 次は飾りつけというか見せ方である。 製作者としては装置の細かい工夫に注目してほしい気もするが、とりあえず今回は本体を隠すことで不思議なシャボン玉発生箱を演出しようということになった。 円筒形の箱から伸びる2本のチューブ。 1本はシャボン液溜め、もう1本はヘリウムボンベにつながる。 ボンベを開くと、シャボン玉が次々と箱の上の穴から飛び出してきて、遥か上の方に昇っていく、というわけだ。
 円筒はダンボールでつくり、ベニヤ板のドーナツ状の枠を嵌めて形を整える。 これに結構手間取り、今日の作業は終了。


8月25〜26日
 ヘリウム入りシャボン玉発生装置の飾り付けをする。
 円筒には切りこみをいれて中を覗けるようにドアをつける。 次々とシャボン玉が出てくる謎の箱…… しかしてその実態は? (ドアを開ける) ジャーン!という次第。
 そして円筒には学生のセンスに任せてお絵描きっていうか落書き。 25日に下書きを済ませて、26日に色を塗って仕上げた。 できあがりが下の写真。 なぜカメなのかは裏にウサギがいるからだそうだが、じゃあなぜウサギかというのそれは不明。
herium soapbubble3


8月30日
 夏休み中の最終チェック。 ヘリウム入りシャボン玉発生装置の試運転をする。
 屋外に装置を設置してヘリウムボンベとビニルチューブでつなぐ。 位置が離れてしまうので、直にシャボン玉のできる様子を見ながらボンベ圧を調節できないので設定が難しい。 どうやらシャボン膜を作るためのガスとシャボン玉を膨らませるためのガスの流量の割合がうまくないようだ。 何度か試してみたが、きちんとできない。 何が悪いのか、部品の改良も含めて再度検討する必要がある。 しかし、時間がない!


9月1〜2日
 ヘリウム入りシャボン玉発生装置の改良を試みるが、どうやってもうまくシャボン玉ができない。 シャボン膜まではできるのだが、そこから大きく膨らまないのだ。 シャボン液のせいかと思い、洗濯のりの量を変えるなどして試してみたが駄目。 時間もないのでガスを二系統に分けて流すのをやめ、バブリングするのみとした。 そうすると小さな泡がいくつも寄り集まった塊ができ、それが浮いていくという状態になった。 今回はこれで勘弁してもらおう。 なにしろこれから10日間は体験入学以外のことで目の回るような忙しさなのだから。

 準備万端とはいかないところだが、このままリハーサルを経て本番に突入するしかない。


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